商船三井ケニア社
2024年11月28日

商船三井、アジア・アフリカの電化に貢献するFSRU改造プロジェクトに注力

     シンガポール北部、マレーシアとの国境ジョホール海峡に面するアドミラルティ造船所。

     シンガポール造船大手シートリアム傘下の同造船所では、商船三井とトルコのカラデニズグループの合弁事業KARMOL向けFSRU(浮体式LNG〈液化天然ガス〉貯蔵・再ガス化設備)の改造工事が進んでいる。

     「LNG船からFSRUへの改造プロジェクトは非常にユニークだ。一般商船とは異なり、船主であるKARMOL自らプロジェクトマネジメントの責任を担う」

     造船所の一角にあるKARMOL専用オフィス。カラデニズの洋上発電事業子会社カルパワーシップのプロジェクトコーディネーター、キム・ミンジュン氏はFSRU工事の特徴をそう語った。

通常の新造船は、造船所が竣工までの全ての建造責任を負うフルターンキー契約で建造される。一方、FSRU改造工事は造船所に全てを任せるのではなく、船主がEPC(設計・調達・建造)に関与して全体のプロジェクトマネジメントを手掛けていく。

改造現場に常駐する、商船三井のシンガポール現地法人MOLアジア・オセアニア(MOLAO)のテクニカルシニアマネジャー、ウディアン・ラトーレ氏は幅広い関係者をまとめ上げる醍醐味(だいごみ)について話す。

「商船三井、カルパワーシップ、KARMOL、造船所、機器メーカーを含め、全員が一つのチームとして働いている。プロジェクトに魂と汗を注がなければ完工にはたどりつかない」

■低炭素シフト貢献

商船三井とカラデニズグループは2019年、洋上LNG発電事業のパートナーシップを始動した。
FSRUと発電船を組み合わせる同事業は、LNGをFSRUで受け入れて再ガス化し、発電船に送って電力を生み出し、陸上に供給するコンセプトだ。
陸上基地を建設するよりも低い投資額で、早期にLNG発電を導入できる。アジアやアフリカの新興国を中心に石炭、石油からLNGという低炭素エネルギーへのシフトに貢献する」
アジア各国の営業に力を注ぐMOLAOの由利毅ゼネラルマネジャーは事業の意義をそう述べる。

カラデニズは従来、重油やガスオイルを燃料とする洋上発電事業を展開してきたが、FSRUのノウハウを有する商船三井とのタッグにより、LNG発電への展開が可能となった。
商船三井にとっても、新興国での事業実績が豊富なカラデニズとのパートナーシップは新市場開拓におけるメリットが大きい。
KARMOLはこれまでLNG船のFSRUへの改造工事で3隻を完工済み。現在、アドミラルティ造船所では4隻目の「LNGT Antarctica」の改造工事が進む。工事予定期間は約1年で、来年中ごろの完工を予定する。

■長寿命化工事

LNG船からFSRUへの改造工事は「長寿命化工事」と「転換工事」の二つのステージに分かれる。
一般的に商船は5年間に2回入渠するが、KARMOLのFSRUはガスの安定供給というプロジェクト要件のために10年間入渠しない前提で長寿命化工事を施す」(ミンジュン氏)
準備段階としてまずLNG船の配管の主要部分を切断して状態を検査し、溶接部分をエックス線でチェック。船内制御システムをはじめ主要設備を最新機器に入れ替え、スペアパーツに十分な予備を確保する。
今回の改造対象のLNG船は船齢30年超だが、日本造船所が建造し、長期輸送契約に専従していたことで健全な状態を保っている。ミンジュン氏は「建造した日本造船所の高い技術のおかげで、メンテナンスを徹底すれば、船齢50―60歳まで使用できるだろう」と話す。

■係留システム

KARMOLがLNG発電を展開する新興国では設置海域に桟橋が存在しないケースも多い。このため、FSRUが単独で波浪や悪天候に耐えて長期安定操業できるよう、強靭(きょうじん)な係留システムが欠かせない。
FSRUが桟橋の機能を担い、最大でトリプルバンキング(3隻同時接舷)も可能とする。全てを支える強固な係留システムの搭載は改造工事において非常に重要な工程だ」(ラトーレ氏
係留システム設置の準備作業として、船首と船尾の船体ブロックを切り出し、より厚い鉄板で強化したブロックと入れ替える。その上で船首と船尾それぞれに係留システムを搭載する。
こうした一連の工事の後、ドライドックでの船体メンテナンスや再塗装を経て、改造FSRUは第2ステージの転換工事に入り、再ガス化設備などを搭載する。
KALMOLのFSRUと発電船は汎用(はんよう)性を重視し、多様なニーズに応えられる仕様を採用。LNG発電プロジェクトの成約時には、最短で6カ月以内に電力供給可能な体制を目指している。

■グループの柱に

GHG(温室効果ガス)削減ニーズの高まりを背景にLNG需要は引き続き底堅く、米国やカタールでのLNG増産も追い風に、LNG受け入れターミナルとその一翼を担うFSRUの需要は40年ごろまでに堅調な増加が期待される。
「新造・改造を問わず、FSRUの新規案件を積み上げつつ、FSRUと発電船を組み合わせた電力供給事業も新興国中心に展開していく。脱炭素の世界的な要請を背景に、天然ガス需要のポテンシャルは今後も増加していく。LNG輸送に並ぶグループの柱としてLNGインフラ事業を発展させていきたい」
商船三井液化ガス事業群第三ユニットの馬田親輔ユニット長は成長への針路と意気込みをそう示す。


掲載のお知らせ


    2024年11月25日に、弊社の事業がYahoo!ニュースに掲載されましたのでお知らせいたします。
    アフリカにおけるFSRUと発電船を組み合わせる洋上LNG発電事業や脱炭素への取り組みについてご紹介いただきました。
    「Yahoo!ニュースの記事ページ」を是非ご覧ください。

    ■掲載サイト名
    Yahoo!ニュース
    掲載サイトURL: https://news.yahoo.co.jp

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